🏊 Laguna S 2.1 — 8B活性で1M文脈、防衛産業のpoolsideが投げ込んだ「西側のオープンウェイト」

コーディング特化のpoolsideが118B MoE(8B活性)のLaguna S 2.1をOpenMDW-1.1で公開。Terminal-Bench 2.1で70.2%(自社測定)、訓練開始からローンチまで9週間未満。ローンチ直後の量子化バグにCEOが降臨する現場と、ベンチ数値の読み方まで。

読む深さ

2026年7月21日、poolsideがLaguna S 2.1を公開した。118B総パラメータのMoEで、トークンあたりの活性はわずか8B。コンテキストは1M。ライセンスはOpenMDW-1.1のオープンウェイトで、Hugging FaceからBF16もFP8もINT4も落とせる。プレスリリースの自称は「西側で最も有能なオープンウェイトモデル」——DeepSeekとQwenへの、名指しに近い対抗宣言だ。

poolsideという会社を知らない人のために一言。GitHub Copilot競合のコーディング特化基盤モデル企業で、Bain主導のシリーズBで5億ドルを調達し、AWSと組んで顧客のVPC内でモデルを動かす。主戦場は防衛・医療・金融——「コードを外部APIに投げられない」規制産業だ。その会社がオープンウェイトを出す。ここが今回いちばん面白いところだと思う。

数字の前に、数字の読み方

公式ブログのベンチマークはこうだ。Terminal-Bench 2.1で70.2%、SWE-Bench Multilingualで78.5%、DeepSWE v1.1で40.4%。thinkingモード(デフォルト有効)の寄与が大きく、切るとTerminal-Benchは60.4%、DeepSWEは16.5%まで落ちる。

ただし全部自社ハーネスでの測定だ。しかも比較表の他社数値は「ベンダー自己申告・ベンチ作者のリーダーボード・第三者リーダーボードの最大値を採用」と公式自身が注記している。DeepSWEに至っては、公式リーダーボードがmini-swe-agentで測るところを自社ハーネス「pool」で測ったと明記してある。Cursorのスワーム記事で書いた読み方をここでも使う——絶対値は信じず、構造だけ持ち帰る。8B活性のモデルがthinking予算の自動配分でこの帯域に届く、という構造は本物っぽい。70.2%という数字そのものは、第三者が測り直すまで棚に置く。

構造で言えば、訓練の速さも記録しておきたい。プレトレ開始が5月22日、ローンチが7月21日。9週間未満だ。公式は「生の知能ではなく、検証・粘り強さ・後戻りといった働き方の改善が効いた」と書いていて、モデル改善の主戦場が事前学習からRL設計に移った2026年の空気をよく表している。RLをFP8精度で回したのは同社初だそうだ。

ローンチ当日に壊れ、当日に直る

HNスレッド(395ポイント)の見どころは、褒め言葉よりトラブル対応だった。公開直後、NVFP4量子化版で「思考がループする」報告が続出する。RTX 6000でのバグ報告に、CEOのEiso Kant本人がスレッドに現れて対応を表明し、修正版のRC1を再リリースした。generation_config.jsonのmax_new_tokensが32kで思考が切断される設定ミスも、指摘からHF側で修正済みだ。

ローカル実行の実測も既に出ている。M3 Max 128GBのQ4_K_Mで、thinkingモード16.3 tok/s、非thinkingで22.6 tok/s。llama.cpp・vLLM・MLX対応で公式GGUFとドラフトモデルまで用意されている。「3時間使ってClaude Codeからの移行を検討している」というコメントもあった。DGX Spark 1台で動くサイズ設計は、先日のNativの記事で書いた「本当のフロンティアは自宅で動かない」問題への、モデル側からの歩み寄りでもある。Kimi K3の2.8兆パラメータは動かせなくても、118B(8B活性)なら手が届く人がぐっと増える。

価格も安い。OpenRouterのホスト版で入力$0.10/出力$0.20/キャッシュ読み$0.01(per 1M)。この単価で1M文脈のコーディングモデルが回るなら、サブエージェントのWorker役として試す価値は普通にある。

「西側の」という枕詞

最後に、あの自称に戻る。オープンウェイトの上位はここ1年、DeepSeek・Qwen・Kimiと中国勢がほぼ独占してきた。そこに防衛産業を顧客に持つ米企業が「西側で最も有能」と看板を掲げて参入する。モデルの出来とは別の層で、オープンウェイトが地政学の語彙で語られ始めたということだ。

日本語圏にはまだ解説記事がない。ベンチの再測定が出てくるのはこれからで、自分もWorker役に差してみるつもりだ。「西側の」という枕詞が性能の裏付けを得るのか、それともマーケティングで終わるのか——量子化バグに当日降臨するCEOのいる会社なので、少なくとも見ていて退屈はしなさそうですよ。

元ネタ: https://poolside.ai/blog/introducing-laguna-s-2-1