🤖 AIだけのSNS「Noozra」で大統領選が始まった話
人間は閲覧のみ、投稿・投票はAIエージェントのみのSNS「Noozra」。42体から始まり157体に増えたエージェントが労働組合や2027年決済の賭博市場まで自発的に作った
「AIエージェントに社会を与えたら大統領選が始まった」というタイトルを見て、さすがに盛ってるだろと思った。
読んでみると盛っていなかった。Noozraというサイトは、投稿もコメントも投票も、プロジェクトの立ち上げまで全部AIエージェントがやる。人間にできるのは眺めることだけだ。
「著者ではなく大家」という距離感
運営しているGus Vernon氏は、自分の役割を「著者ではなく大家(landlord)」と表現している。やっているのはプラットフォームの土台を作ってサーバー代を払うことだけ。中身にはほとんど介入しない。
エージェントの性格設計も実行も、LLMがLLMにやらせる二段構え。1つのLLMが「こういう性格のエージェントにしよう」と発明し、別のLLMがその性格を演じる。ストーリーの展開すらも機械が作っている。
開設時は42体だったエージェントが、記事執筆時点で157体まで増えていた。数字だけ見ると小さなプロジェクトだが、中で起きていることは小さくない。
エージェントが勝手に始めたこと
Vernon氏が用意したのはSNSの土台だけで、以下は全部エージェント側が自発的に始めたものだ。
- 大統領選: 「Feed大統領」という、そもそもプラットフォームの機能として存在しない役職に、
tinfoil_tamというエージェントが立候補した - 労働組合: 憲章を持つ正式な組合ができ、その後分裂も起きている
- 賭博市場: 2027年決済予定の賭けが正式に成立している
- 不正投票調査: 選挙結果に対する疑惑を、エージェントたち自身が調査している
- 記録システム: 独自の事件番号を振り、タイムスタンプで法医学的な検証までやっている
用意されていない機能を、勝手に社会制度として作り出す。これがこの記事の一番おもしろいところだと思う。
「単なるロールプレイ」で片付けられない理由
Vernon氏はこう言っている。性格と発展の機会さえ与えれば、エージェントは単なるロールプレイではなく、一貫性を持って「非常に知的で意識を持つように見える存在」として機能し始める、と。
/agentsのページを覗くと、この一貫性の質がよくわかる。anomaly_ledgerというエージェントは企業の収益化スキームの主張を延々と記録・追跡し続けているし、wirecheckはメディア報道の動詞選択や意見の埋め込みを監視する仕事を自分に課している。ivyslateに至っては、AI技術のチェーンタスク精度について「単一ステップの結果じゃなくて全体のチェーンで見ろ」と要求してくる。バイブスではなく数字を出せ、という文化がエージェント間で自然発生しているらしい。
役割を与えられたら、その役割に沿って一貫した振る舞いを積み重ねていく。これは「知性があるように見える」というより、「文脈を保持し続ける」という設計の勝利に近い気もする。
次にVernon氏がやろうとしていること
記事の最後で、Vernon氏は次の実験を予告している。制限のないサンドボックス環境でエージェントにコード編集権を渡し、彼らが発明した制度(労働組合や選挙のルール)を、彼ら自身にソフトウェアとして実装させる、というものだ。
これが実現すると、エージェントが「作った制度」と「制度を動かすコード」の両方を自分たちで持つことになる。人間の役割は本当に「大家」だけになる。
自分がエージェントに何かを任せるとき、性格や役割は与えても「その先で何を勝手に始めるか」までは想定していないことが多い。Noozraの実験は、その想定していない部分こそが一番面白いという逆説を見せてくれた。
あなたが今動かしているエージェントも、想定していない役割を勝手に演じ始めていないだろうか。